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貸金業者に給料を差し押さえられたら

破産を申し立てると、破産者に一定の財産がある場合には破産管財人がついて破産手続きが始まり、債権者が個別に債務者の財産を差し押さえることは禁止されます。

このため、破産手続きが開始されて破産管財人が選任された時点で、給料の差押えはできなくなります。

これに対し、破産者に財産がないため破産手続きが開始されず、破産管財人がつかない場合、これまでは免責が確定するまで給料を差し押えることが可能で、破産を申し立てても一部の強硬な貸金業者は給料の差押えを行い、それが破産者の生活を再生させることの障害になっていました。

そこで新しい破産法では、破産の申し立てをすると同時に免責許可を申し立てたとみなすという規定が定められ、免責許可の申し立ての裁判が確定するまでの間の、強制執行・仮差押えなどが禁止され、すでに強制執行などがなされている場合には、それを中止するという規定が設けられました。

離婚した夫が破産したら子どもの養育費は受け取れないのか

これまで破産した場合に「租税債権」「債権者名簿に記載しなかった債権」などは免責されないとされていました。

しかし、新しい破産法の制定により、免責されない債権が拡張され、破産者が扶養義務者として負担すべき費用は免責されないことになりました。

したがって、たとえ離婚した夫が破産して免責許可決定が確定したとしても、養育費の支払い義務は免責されず、離婚した夫には引き続き養育費を支払う義務が残ることになります。

なお新しい破産法の制定に伴い、個人再生手続きについても、扶養義務者として負担すべき費用は免責されないという規定が設けられました。

そのため、個人再生手続きによって他の債権は減額されたとしても、養育費は滅額されることなく全額支払わなければなりません。

また参考までに、養育費以外に免責されない債権としては、次のものがあります。

①租税等の請求権
②破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
③破産者が故意または重大な過失により人の生命または身体を侵害した場合の損害賠償請求権
④雇用関係に基づいて生じた従業員の請求権及び従業員の預り金返還請求権
⑤破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権
⑥罰金等の請求権

ギャンブルに使ったお金は免責されないのか

破産の免責に関しては「浪費または賭博その他射倖行為によって著しく財産を減少させたり、過大な債務を負担した場合は、免責不許可事由になる」と破産法252条1項4号で定められています。

しかし、破産者のなかにはギャンプルや浪費などで借金を作った人が少なからず存在します。

それらのすべてが免責されないとすると、免責制度はほとんど意味をなさなくなります。

そこで、例え免責不許可事由にあたるような場合でも、裁判所は破産に至った経緯などの一切の事情を考慮して免責許可をすることができるとされており、破産が破産に至る事情を正直に申告し、破産手続きに誠実に協力すれば、そのような事情を考慮して、裁判所が免責の許可を決定をすることは大いにあり得ます。

実際免責されなかった事例というのは、浪費がひどいだけでなく、被産手続きに不誠実な態度であった場合がほとんどです。

したがって、たとえギャンブルで作った借金であったとしも、経済的生活の再生に強い意欲を持っているのであれば被産申立てを検討すべきであり、この場合は免責が許可される可能性も高いといえます。

破産に必要な期間

破産の申し立てから免責詐可決定が確定するまでの期間は、裁判所によって若干違います。

東京地方裁判所を例にすると、概ね次の期間を目安にすればいいでしょう。

同時廃止事件……3ヵ月半程度
(破産者に財産がなく、破産管財人がつかない場合)

管財事件……4ヵ月半程度
(破産者に財産があったり、とくに管財人が調査する必要があるなどの理由から破産管財人がつく場合)

この期間の間に裁判所に行く回数は、だいたい1回~2回です。

また、破産管財人がついている場合は、破産管財人と打ち合わせなどをする必要があります。

もちろん、大規模破産事件や財産の換価手続きに時間がかかる事件もあり、そのような場合は、打ち合わせや、債権者集会を何回も開かなければならないので、この期間が長期におよぶこともあります。

従来、破産手続きは手続きの厳格な処理を重視していたため時間がかかっていました。

しかし、それは破産者の生活再生にとって障害でしかなく、債権者にとっても迅速に処理されたほうがメリットがあることから、裁判所でも迅速な処理を進めるようになりました。

さらに新しい破産法の制定により、免責の審尋は裁判所の判断で行わなくてもよいようになり、免責決定の公告が廃止されたので、破産の手続きは今後もより迅速化すると思われます。

破産しても自動車を手放さずに済む方法

破産手続きとは、破産者が持つている財産をお金に換えて、それを債権者に配当する手続きです。

白動車も財産価値がある以上、売却することが原則になります。

しかし、その白動車が古い年式で財産的価値がないものであれば、それを売却することさえできないわけですから、自動車が売却処分されることはありません。

それではどの程度であれば財産的価値がないといえるのか、これは裁判所によって取り扱いが異なります。

例えば東京地裁の場合は、白動車を査定して査定額が20万円以下の場合は財産的価値がないものと判断されて売却処分の対象外となり引き続き自動車に乗り続けることができます。

逆に自動車の査定額が20万円を超えた場合は、破産管財人が換価処分するか、破産者の親族に査定額で白動車を買い取ってもらうという処理をしてきました。

そして、後者の場合は親族が被産者に自動車を使用することを認めれば、破産者が引き続き白動車を乗り続けることができるわけです。

しかし、破産法の改正により白由財産の範囲が拡張され、裁判所が日常生活に不可欠な物であると判断した場合には破産者の白由財産とすることができるようになりました。

これにより自動車が不可欠である事情を具体的に申し立てれば、裁判所が自由財産と判断する可能性は高く、その場合には白動車を乗り続けられることになるでしょう。