うつ病は「復学・復職時」に注意

うつ病の治療で休学・休職していた人が、元の生活に復帰すると、再び症状が悪化して療養生活に戻ってしまうことは少なくありません。この「回復期」には、本人と周囲にはどんな心がけが必要なのでしょう?

心が不安定なうつ病の「回復期」

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「よくなったはずなのに、なぜ以前のようにいかないの?」と焦りがちなうつ病の回復期

うつ病で一定期間療養に専念した人が、復学・復職したそばから症状が再燃し、学校、職場に来られなくなる――。こうした事態に直面すると、「よくなったはずなのになぜ?」「また治療を一からやり直し?」と、本人も周りも心配になってしまうでしょう。しかし、「うつ病は“回復期”こそ注意が必要」――このことを頭に入れておけば、慌てることはありません。

うつ病は、1日中憂うつで寝込んでしまうほど症状が強いときには、学校や会社を休み、服薬治療を行いながら治療に専念するのが、一般的です。症状が軽快してくると、服薬を続けながら復学・復職することになるのですが、ところが、この復帰時のストレスによって症状が悪化し、再び療養が必要になることは少なくないのです。

回復期には、意欲はあっても、感情は沈んでいる

うつ病の回復期には、意欲は湧いてきているのに、感情はまだ上向いていません。したがって、この時期には見た目には元気に見え、本人も「早く元の生活リズムに戻したい」と気持ちがはやっているのに、思うどおりに心と体を動かせず、焦燥感と苛立ちが募りやすい時期なのです。

そして、「できるはずなのにできない」ことに苛立ち、「やっぱり自分はダメなのではないか」と、落ち込みやすい時期でもあります。こうした不安定さのなかで、衝動的に自殺を考えてしまう方は、残念ながら少なくありません。

したがって、うつ病の回復期には絶対に無理をしないことが大切です。週数日、短時間の復学・復職から始め、心身の状態を確かめながら徐々に時間を伸ばし、ゆっくり復帰していくことが必要になります。

周囲の回復への期待がプレッシャーになることも

また、周囲の方も回復を急かさないことが必要になります。症状が重い頃に比べるとずいぶん回復して見えるため、「元気になってよかったね」などと声をかけがちなのですが、この言葉は、当事者にとっては強いプレッシャーになります。

当事者は、こうした言葉を受けると相手の期待に応えなければと頑張ってしまいがちです。ところが、意欲はあってもまだ十分にパワーを出せない段階であり、思うような成果を出せないことに、気持ちが空回りしやすいのです。さらに、そうした複雑な心境を口に出すことにもためらいがちですので、1人で葛藤を抱え込んで苦しくなっていることが少なくありません。

こうした状況のなか、周囲が腫れものに触るように、刺激しないようにと接触を避けてしまうと、当事者は自分が周りの重荷になっているような肩身の狭さを感じて、ますます落ち込んでしまうでしょう。したがって、周囲は温かく見守りながら、「少しずつ慣れていけば大丈夫だよ」と安心を与えていくことが必要になります。